neural network

neural network
わずか、直径0.2mmほどのミシン糸。
その白い糸は漂白の段階で含まれる科学染料により紫外線光線に反応して光る性質を持つ。
その極細のミシン糸を一本一本編んで造り出される空間と、そこに浮かび上がる像が、
人工的に考案された「人」の脳を模したニューラル・ネットワークを隠喩とする。
暗室の内にセットされたブラック・ライトから照射される紫外線光線が、
その糸で編まれた像を反射によって浮かび上がらせる。
1940年代まで製造されていた「ウラン・グラス」もまた、紫外線光線によってガラスに混ぜ込まれたウランが反射して光る。
ミシン糸と同じように暗闇で光り、放射性物質を「人」の眼に認識させる。
「人工的」に作り上げられた物質が、「人」の生活を豊かにする。「文明」の基礎をなす「電気エネルギー」を生み出し、そのエネルギーを基にコンピューターを開発した。
そして、「人」の思考の根幹である「脳」を「人工的」に模した計算マシンを開発するためのシステムとして「ニューラル・ネットワーク」があるとしたら、
そのイメージをウランと同じように紫外線光線で浮かび上がらせる行為そのものをアナログな手作業で編み上げた空間作品として表現する。

「人工的な」という言葉を英語に翻訳すると「artificial」という単語が相当する。
「アート」という言葉はもちろん「art」が語源なのだが、このアートという言葉から派生した
「artificial」という言葉が「人工的な」という意味を内包すると考えると、甚だ違和感を覚えることもある。
しかし、「Art」が技法という意味を有するので、ニュアンスとしての
「artificial」が「art」の技術の先にあるものとして考えると妥当とも思える。
「人工的な」、とは一体何を意味するのだろうか?
人が擬似的に作り始めた人工知能AIは、その特性からある系における正誤修正計算が非常に発達して、
すでにオセロやチェスでは人の能力を超えつつある。
まさに、art(技術)がartificial(人工的な)を生み出した結果であるとも考えられる。
しかし、実物の人の脳が判断出来るファジイな決定が、未だに性格なメカニズムとして研究されていない現状で、
今後のartificialなintelligenceをどのように捉えるかが興味深い。
そこに、霊長類ヒト科の特徴でもある「描くこと」や「踊ること」「歌うこと」はどのように組み込まれてゆくのだろうか?
ニューラル・ネットワークを模した空間に隠喩としての「ヒト」を表現することで、
自らに内包されたファジイな選択の結果にあるアートを表現することがメインコンセプトとなる。